第79回話音倶楽部

2016年10月15日(土)


2015年10月15日(土) 午後6時開演
 
【出 演】
海野幹雄(チェロ) 
加藤雄太(コントラバス)

 
 
風が気持ちの良い秋の空気を運び、サロンコンサートにぴったりの初秋の夜。
今回のゲスト、コントラバス奏者•加藤さんの軽快なトークで和やかな雰囲気で始まった第79回話音倶楽部。
加藤さんからチェロ奏者•海野さんの紹介もあり、一曲目は海野さんのソロ。言わずと知れたチェロ曲、バッハ作曲の無伴奏チェロ組曲第一番ト長調 BWV.1007。最初に海野さんから解説がありました。
1800年代に入り、メンデスゾーンがバッハの作品を見つけたことから多く弾かれるようになったのだそうです。それまでは、今より以前の作品をコンサートで演奏するというスタイルは定着していなかったということです。彼のおかげで今日のコンサートスタイルが確立しました。20世紀にはいり、チェロ奏者パブロ•カザルスがこの曲を発見し演奏したことにより地位を上げ、沢山の奏者が現在も演奏しています。
いよいよ演奏です。
秋の乾いた空気の中に一音目のGの音がなり渡り、すぐに演奏に引き込まれました。プレリュードと5つの舞曲から成る組曲、曲と曲をつなぐ間合いも素晴らしかったです。重厚さと軽快さ、こんな音を間近で聴けて幸せでした。

二曲目はコントラバスの加藤さんも加わっての二重奏。ロンベルク作曲の二本のチェロのためのソナタ•ト長調作品43−3。海野さんが面白い逸話を紹介してくれました。
作曲家兼演奏家であったロンベルク、歴史上問題の人物なのだそうです。この時代、作曲家が自ら作曲し演奏するというのが定番スタイルで、ロンベルクもその一人でした。彼の曲と演奏は当時人気があり、コンサートも満員だったそうです。彼の演奏を聴いて「うまい!ぜひ彼のためにチェロの曲を書きたい!」と思ったのが、かの有名なベートーヴェン。さっそく訪ねてみると、すでに名声もあったロンベルクはさほど有名でもないベートーヴェンの依頼を断ったのだということです。そんな訳で、ベートーヴェンはチェロのソロ曲を残さなかったそうです…
元々はチェロ二本のための曲ですが、チェロとコントラバスの二重奏での演奏。
単純に素晴らしかったです。私にとって初めての組み合わせの演奏でした。お互いを尊重し合い、計らずとも自然に互いを引き立たせているのが印象的でした。同じような音系が連続するところも、人物と影のように寄り添い、音の重なりが心地よかったです。目を閉じて聴くとヨーロッパの協会で聴いている、そんな雰囲気でした。

ワイン休憩を挟んで後半です。ハイドン作曲の二重奏曲ニ長調。
この曲はバリトンという弦楽器(ヴィオラ•ダ•ガンバに似た楽器)のために作曲されたものです。ハイドンはバリトンを使用した楽曲を100以上も残しており、私も他のバリトンのための曲をマンドリンとギターという編成で演奏することがあります。楽曲の成り立ち、響き、本当に大好きです。
今回の編成、チェロとコントラバスでの演奏、とにかく素晴らしかったです。耳に深く入ってくる音、特にユニゾンしている箇所はもっと聴いていたかった。
先ほどのロンベルクの曲でもヨーロッパを感じると書きましたが、こちらもまさにそんな感じでした。中世ヨーロッパへと誘われる、そんな気持ちになりました。お2人の素晴らしい奏者が織りなす芸術を体感しました。

最後はロッシーニ作曲のチェロとコントラバスのための二重奏曲ニ長調。
プログラム最後は華やかにロッシーニ! 銀行員のお弟子さんのためにかかれたサロン音楽。この会にぴったりでした。
華やかさと、深さどちらも感じる曲で、特に印象的だったのが二楽章でチェロが浪々とメロディーをきかせるところです。みなさんワインも飲んで深く重厚な二つの楽器から流れる音にうっとりしているように見えました。

アンコールはなんと加藤さんがピアノで伴奏をして、サンサーンスの白鳥!素敵で楽しかった!
お二人の人柄も素晴らしく終始和やかな会となりました。   (児嶋絢子 記)
 
 
●プログラム● -----------------------------------------------------------------

 
 
●プロフィール● ---------------------------------------------------------------
 
 
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海野 幹雄 (チェロ)
 
バロック、古典、ロマン派から現代音楽までと非常に広いレパートリーを持ち、
時には自身で編曲や指揮等も行う、マルチなチェリスト。
桐朋女子高等学校を経て、桐朋学園ディプロマコース修了。
第20回霧島国際音楽祭で特別奨励賞、第12回全日本ソリストコンテストグランプリ等、
数々の賞を受賞。
ソロ活動、アンサンブルの他、東京フィル、神奈川フィル、仙台フィル、大阪フィル等、
全国の主要オーケストラへ定期的に首席チェロ奏者として客演している。
(財) 地域創造主催「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」登録アーティストとしても活躍。
2012年には1stアルバム「海野幹雄playsシューマン」をリリース。
室内オーケストラARCUS(アルクス)、ピアノトリオ海(Meer)等数多くのアンサンブルや
室内オーケストラに所属。NPO法人「ハマのJACK」理事。

海野幹雄 オフィシャルウェブサイト:http://mikio-unno.com/
 
 
 
 
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加藤 雄太 (コントラバス)
 
桐朋学園大学音楽学部を卒業、同大学研究科修了。
コントラバスを都筑道子、西田直文、河原泰則の各氏に師事。
タングルウッド音楽祭に参加したのをはじめ、インチョン&アーツ、バイロイト音楽祭、
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト等に参加。
ボルドー音楽祭にてロラン・ドガレイユ、ミシェル・ミカラカコス、ロラン・ピドゥー、パトリック・ジグマノフスキーらとシューベルトの「鱒」を共演した他、
サイトウ・キネン・フェスティバル松本、ラヴェンナ音楽祭、霧島国際音楽祭、東京・春・音楽祭、
別府アルゲリッチ音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ、鎌倉芸術館ゾリステン等に出演。
現在フリーランスで、ソロ、室内楽、オーケストラなど多方面で活躍中。
 

 
 
 
 
 
 
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79回 チラシ

秋の話音倶楽部では、チェロの海野幹雄さんとコントラバスの加藤雄太さんをお招きし、低音の魅力を存分にお楽しみいただきます。お楽しみに!