第90回話音倶楽部

2019年6月30日(日)


2019年6月30日(日) 午後3時開演 
 
【出 演】
田中麻里(アイリッシュハープ)
小川美香子(ダルシマー)

第90回話音倶楽部は、アイリッシュハープの田中麻里先生とダルシマーの小川美香子先生をお迎えしました。
片岡先生は以前からアイリッシュハープを近くで聴きたいと望まれており、門下生で奥様がアイリッシュハープを習っている方がいて、
ご縁があって今回の話音倶楽部が実現しました。

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コンサートの前半は、田中先生によるアイリッシュハープの独奏です。
プログラムにはいくつかの曲名しかありませんでしたが、アイルランド民謡はもちろん、スウェーデンやスコットランドやイタリアの曲まで、
色々な曲を演奏してくださいました。
アイリッシュハープの曲は舞踊曲と歌曲が多いそうですが、今回はゆったりとした歌曲を中心に奏でられ、
美しい調べが流れ出すと会場が癒しの空間に変わります。もとは楽譜がなく吟遊詩人によって歌い継がれてきたそうです。
失恋の歌が多いとのことで、とても美しく清らかな音楽ばかり。当時の人たちが叶わない恋や切ない想いを大事にしていたのが感じられます。

アイリッシュハープは弦の数が25本、26本、29本、34本など多種類あるそうですが、今回 田中先生が使われたのは弦が22本の楽器でした。
22本といっても間近で見ると弦が多くは見えませんでしたが、演奏されるともっとたくさんの弦があるように、たくさんの音が聴こえました。

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半音はレバーを操作して音を変えているので、曲中で転調すると大変そうです。
なお、ゴシックハープの時代は半音を上げ下げする概念がなかったので、ゴシックハープにはレバーがないそうです。
主にコンサートホール用のグランドハープに比べると、アイリッシュハープは小規模な会場に向いているのだと思いますが、
今回の話音倶楽部の会場にはピッタリに感じられました。天上の音楽を思わせる音色がよく響いて、心身に染み渡る心地がしました。

休憩を挟んで、後半はアイリッシュハープとダルシマーの二重奏です。
前半から演奏者席に置かれていた不思議な楽器に、お客様も興味津々。後半が始まって間もなく小川先生から楽器についての説明がありました。
ダルシマーはイランが発祥の打弦楽器でイランではサントゥール、
ドイツではハックブレット、イタリアではサルテリオ、東欧ではツィンバロンなどと呼ばれて発展しているそうです。

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ドイツ名の「ハックブレット」は、微塵切りする板=まな板のことで、まな板の上でハーブを微塵切りする様子からついたそうですが、
撥で弦を叩いて演奏する様子がたしかに料理をしているようにも見えます。
「ダルシマー」は甘い音色を意味するラテン語が語源とのことでしたが、その名の通り とてもかわいらしい音色で、聴き惚れてしまいます。

そんなダルシマーとアイリッシュハープで、
スペイン、イタリアの曲や、カタルーニャ民謡、アイルランド民謡など、暖かい演奏をたくさん聴かせていただきました。

また、中世ダルシマーとゴシックハープで演奏された、バルセロナの修道院の修復の際に壁の中から発見されたという楽譜は、
とても神秘的で中世の教会にタイムスリップしたような気持ちになりました。
アンコールで演奏されたダルシマーの現代曲は、それまでとまったく違ったあやしい雰囲気で、たいへん興味深いものでした。

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演奏終了後には、楽器を触らせていただいたり、お客様の質問にも時間が許す限り応えてくださった田中先生と小川先生。
お二人の優しい響きに会場全体が包まれて、楽しい時間を過ごすことができました。
田中先生、小川先生、ありがとうございました。   (本田純子 記)

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●プログラム● -----------------------------------------------------------------

庭の千草、ロンドンデリー・エアーなどアイルランド民謡
吟遊詩人オカロランの曲
風が吹いて(ラスウェルガスの写本より)
イタリアン・グラウンド(R.カー)
アメリアの遺言(カタルーニャ民謡より)     その他

●プロフィール● ---------------------------------------------------------------------------------------------

田中 麻里  アイリッシュハープ

アイリッシュ・ハープを西村光世氏に師事。
2004年~2009年ドイツ在住、金属弦ハープをステファン・バッティゲ、ハビエ・サインツ各氏に師事。
現地のハープ講習会に参加するなど研鑽を積み、アイルランドでHistorical Harp Society of Ireland(HHSI)主催のスクールにてハープの伝統奏法を学ぶ。
2009年ドイツ、ハンブルグにてソロライブを開催。
各種イベントやコンサート、NHKなどTV番組にて演奏。朝日カルチャーセンター等でレクチャーコンサートを行う。
マイク真木氏、C.W.ニコル氏らと共演。歌、ギター、ケーナ、ハックブレットなど打弦楽器、アイルランドの伝統楽器や古楽器など、多彩なアーティストと演奏、ポップスバンドにも所属するなど意欲的に活動を行う。
アイリッシュ・ハープ教室、アイルランドのパーカッション教室主宰。JEUGIAカルチャーセンターららぽーと立川立飛、レソノサウンド講師。HHSI会員。

小川 美香子  ダルシマー

ダルシマー(独名ハックブレット)、バロックサルテリオなどの打弦楽器をリヒャルト・シュトラウス音楽院のB. シュトルツェンブルグ氏、古楽パーカッションをM.モレナに師事。
日大芸術学部、東京芸術大学にて打楽器を学ぶ。
2013年2月、CD「メランコリア~ダルシマーの世界~」をALMレコードよりリリース。レコード芸術準推薦盤、音楽現代、CDジャーナル各誌、朝日新聞「for your Collection 」の推薦盤とて、またステレオディスクコレクションにて最優秀録音盤に選出される。
同年9月、在ミラノ日本総領事館の後援を得て天正遣欧少年使節団をテーマとした演奏会をイタリアのクレモナ、ブレーシャ、シチリアのタオルミーナギリシャ円形劇場で行う。
NHKFMシアター、TV、映画、CAPCOMゲーム音楽などの録音の他、台湾で行われたWOCMAT(International Workshop on Computer Music and Audio Technology )に出演するなど、古楽から現代曲まで幅広く活動する傍ら全音楽譜出版社より各種楽譜の発刊に携わる。
レソノサウンド講師。「ラ・ガラッシア」主宰。NPO法人ルネッサンス音楽普及協会会員。

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アイルランドの伝統楽器 アイリッシュハープ。 やさしく どこか懐かしさや温かさを感じるアイリッシュハープの調べを、
ドイツで研鑽を積み、アイルランドでハープの伝統奏法を学ばれた田中麻里さんの演奏で、
小川美香子さんのダルシマーとの共演にてお楽しみください。